秋葉原通り魔事件の自分なりの総括/オタクにすらなれなかった男

 事件から3日経って、マスコミ各社も自分の主張したいストーリーに沿った資料を概ね揃えたようで、昼の各局ワイドショーではこぞって加藤容疑者の半生を追って原因らしきものを突き止めようとしている状態です。それでもどうやら取材陣は卒業文集に載せた1枚のテイルズ絵以上のものは入手できなかったらしく、全く報道されることがありませんでした。彼が書いた(掲示板書き込み以外の)文章も報道されていないところを見ると、文章もさして特徴的でなかったのでしょう。少なくとも彼自身はコンテンツを作るタイプのオタクでは無かったと推察されます。カラオケでアニソン以外の歌を歌わないとか、「二次元以外に興味がない」と話したとかそういった話はありますが、声優追っかけてコンサートに行ったとか、コスプレしたという話は全く出てきません。
 マスコミが「オタクによる殺人」だと断じたり、ネット上で「日研総業に対する怨恨だ」と主張する者が出たりといった状況になっていますが、彼はオタクではないし、まして日研総業秋葉原に支店がある)への怨恨だとも思えません。『或るオタクの遠吠え-Over the Rainbow-』でも一部言及されているのですが、彼はオタクになれなかった人であり、その彼が殺そうとしていたのは秋葉原の「幸せそうなオタク」だったのではないかと考えます。
 実際のところ、オタクを名乗るのは簡単ですが、オタクを続けるのは簡単ではありません。アニメだけでも今や年間百を超えるオーダーで新番組が放送されていますし*1、さまざまなメディアも大量に発行されています。そのすべてに目を通すわけではありませんが、対象を狭めればそれなりに精通していることが求められます。*2自分はオタクだと主張してオタクらしい格好をし、またいくら「二次元にしか興味が無い」とうそぶいても、オタクとして胸を張れること*3が何も無ければ、オタクからはオタクとして認めて貰えないでしょう。知識も無い、能力も無い、財産(コレクション)もないではオタクとして友人関係を維持するのにも支障がでます。実際、今の10代には漫画が読めない人もそれなりにいるという話も聞きますし、(http://blogs.yahoo.co.jp/ccomori/53335896.html)また、プロアクションリプレイなどの裏技道具をつかわないとゲームが進められない人も知人にいます。また、20代後半の知人で「今度ライトノベルの大賞に出すんだ」と言った原稿を試しに見たら文章がまるで日本語になってなかったりといったこともありました。つまりオタクとしての基礎体力がまるで足りない、あるいは無い人たちがいるのです。そうした一群の一人になってしまった、「オタクにすらなれなかった」加藤容疑者が、世の中で彼らなりに楽しそうに友人と交流するオタクたちを恨みに思ったとしても不思議は無いと考えます。
 現在マスコミの方々はダガードラゴンクエストに出てくるからといってゲームの影響だと苦しいミスリードをしたり(http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp200806090251.html)しているようですが、彼は本当にオタクだったのか、オタクになれたのか、そしてオタクになっていればこんな犯行には及ばなかったのではないかと問いかけたい気持ちでいっぱいです。周囲のベテランのオタクの方々を見ていると本当に善良な方が多いです。まあそれは世間の迷惑になることをするとオタク活動に支障がでるからという、打算の末の善良さがほとんどなのですが。

さらに追記。現場で一番にやけてたのはTBSの報道クルーでした。こいつ犯人なんじゃないかって位のにやけ方だった……。*4

*1:2007年で127本

*2:勿論創作能力のある人は色々なことに疎くても許されるのですが

*3:知識や創作能力がなくても、ゲームがうまいとか、コスプレが似合うとかでも

*4:ソフマップ本館前ですれ違った