東京のオタク街は移動している。

naojiro-naoe2008-06-17


 秋葉原通り魔事件関係について調べるにつけ気になったことがあったのでメモ代わりに書きました。秋葉原自体が青果市場、ラジオ街から電気街、電脳街からオタク街に至るタテの変化について言及しているテキストは数多くあったのですが、オタク街そのものの移動、つまりヨコの変化について言及しているものが殆ど無かったので書き付けておきます。私の知る限りの、ここ30年ほどのオタク街の移動についてです。

渋谷-下北沢 (1980年代前半まで)

 今では互いに反発しているらしいオタク系とサブカル系のメディアは、かつてはかなり近しいものでした。このことは「ふゅーじょんぷろだくと」や「SFイズム」がサブカル系雑誌の交換広告をしていることなどからも伺えます。*1それぞれが協力し合わないことには立ち行かないこともあるでしょうし、それぞれの編集者が元*2左翼系の方が多かったためでもあるでしょう。*3これらのショップが数多くあった渋谷〜下北沢にかけての井の頭腺沿線が当時のオタクメディアの中心地だったように思います。代表的なショップとして「まんが書店」「ぶっくすオリーブ」「DORAMA」「セカンドハンズ」「大盛堂」を挙げておきます。*4後に「J&P」「えるぱれショップ」等も渋谷に進出しました。センター街のチーマーが増えるに従いショップも減少、まんが書店は80年代後半に閉店。今名残があるのは仲屋むげん堂の向かいあたりにある大陽出版の営業所ぐらいでしょうか。*5

新宿 (1980年代前半〜1990年代前半)

渋谷の隣接地として、またゴールデン街文化のいい加減さをバックに次々とショップが増えていった場所。伝説の喫茶店「カトレア」があったのもここ。北新宿のダイカンプラザ付近などは洋楽ビデオなどの小規模なショップなどが多くあった場所だけに受け入れもすんなり行きました。都庁の新宿移転に伴う再開発と綱紀粛正によって撤退した店も多かったです。代表的なショップとして東口側の「世界堂」、「ふりーすぺーす」、「アニメック」、あと「模索舎*6など*7、西口側の「ソフマップ」「とらのあな」「イエローサブマリン」「フロンティアランド」大久保の「コミックイン」代々木の「ポストホビー」など。都庁移転前にあった西口方面の小規模ショップ群については名前を失念してます。すみません。そういえば新宿駅安田口が晴海会場に行く定期バスの始発だったことも大きいかもしれません。いやそれはないか。

秋葉原 (1990年代中盤以降)

この頃までに電脳街として進化していた秋葉原の空きテナントに、オタク系ショップやコスプレ系ショップが新宿を避けて開業。秋葉原がコンテンツ街として認識される切っ掛けを作りました。元々昭和通り沿いに小規模な風俗街があったことと、ミナミムセン跡地にドンキホーテが出来たことが大きな変化に繋がりました。今後、UDXダイビル等の開業によって大きな変化があるかもしれません。*8

その他のオタク街

池袋

サンシャインシティが近いこともあり、ショップの支店が多く出店されています。かつては印刷所「創造出版」もここにありました。キンカ堂もここ。
1980年代にはナールや東京文芸、しまや*9にも電車1本でいけるという強みも。

中野

もともと中央線文化の影響を強く受けたサブカル街だったのが、いつのまにかまんだらけ企業城下町に。

早稲田

古書街を軸にオタク街化する場所は多いです。他にもマンガ図書館(鶴巻町)、ソフマップ1号店*10、東京書房、春秋会館(高田馬場)等がありました。

神保町

早稲田と同様。高岡書店と書泉の存在が大きいです。

蒲田

イベント会場*11を擁する街。ユザワヤの存在がコスプレ方面には強く訴えかけます。
 そういった訳で、秋葉原=オタクでないのと同じように、オタク=秋葉原でもありません。これからも秋葉原のオタクはどんどんマスコミの手垢にまみれていくでしょうが、オタク街はマスコミが完全に把握したと思った時にはどこかにすっかり移動しているかもしれません。

*1:「Fool's MaTE」「DOLL」「プレイガイドジャーナル」「ビックリハウス」「東京おとなクラブ」など

*2:あるいは現在も

*3:当時のインタビュー記事などで何の前フリもなく「70年の時はどうしてました?」等という質問が出てくる。これは「70年安保闘争のときはどういった立ち位置でしたか?」ということだったりする

*4:偏っているかもしれませんが、体験的なものなので勘弁してください

*5:大陽出版の営業所が開かれたのはずっと後でしたが

*6:ここでしか手に入らない漫画があった、おぐらしげきが描いていた「とらぬたぬき」(岡山のミニコミ誌)とか

*7:そういえば新宿書店っていつごろ開業したんでしょうか

*8:ていいますか、もうありますね。

*9:しまや出版のみ現存

*10:当時は貸しソフト屋。直江も会員でした。2フロア下にも同業のショップがありました

*11:かつては大田区産業会館、現在はPiOやアプリコ